釣りという趣味は男性を中心に根強い人気があるものの、ひと昔前と比べると衰退の一途を辿っています。釣り好きなぼくとしては寂しい限りですが、人口減少が続く中でこの傾向はしばらく続くでしょう。
そんな現状の釣り人口や釣具の売れ行き状況などを調査してみました。今後の釣り界隈を支えるために、また大好きな釣りを末永く楽しめるように、できることを考えます。
釣り人口はどのくらい減った?
実際のところ、土日に釣り場に出かけると釣り人やファミリーで賑わっているのを見かけますし、釣具屋さんもお客さんがひっきりなしに来店している状況から、それほど衰退しているようにも見えません。
実際に統計データを調べて、定量的に考察してみます。
釣り人口の推移は減少の一途
最新のレジャー白書(2024)から釣り人口を見てみます。
2006年の1,290万人から減少してきており、現在の2023年はその半分以下の510万人となっています。
コロナ禍の影響により、2020年→2021年で釣りやキャンプなどのアウトドアレジャーが人気という報道が多かったですよね。密を避けて楽しむことができるレジャーとしてアウトドア業界にまさかの追い風になりました。
しかし後になって見てみると、2020年→2021年の釣り人口は確かに増加していますが、それでも統計上はたった10万人しか増えていません。しかもその後また減少してしまっています。
総人口に占める釣り人の割合は下げ止まっている
総人口が年々減っているのだから、必然的に釣り人口も減少傾向なのは当たり前か。そんなことを思ったので、今度は先のレジャー白書の釣り人口データと、総務省統計局の総人口データから、釣り人の割合(釣り人率)を求めてみました。

これを見ると、釣り人率(総人口に占める釣り人の割合)も年々減少傾向にあるようです。しかし、人口減少スピードに比べると釣り人率の下降スピードは緩やかであり、近年はある程度下げ止まっているようにも見えます。
このようなことから、「釣り人率はほぼ一定だけど総人口が減っているから釣り人口もその分減っている」と言えそうです。
年間平均活動回数は約10回、年間費用は約4.4万円
レジャー白書2024によると、釣りの年間平均活動回数は約10回と統計されています。

釣りの年間平均活動回数はスキーやボウリングと同程度です。
釣りに要する年間平均費用は4.4万円です。スキーの9万円よりは安価であるものの、ボウリングの1.6万円に比べると高価です。これは肌感覚的にも理解できる傾向です。
ちなみに余談ですが、最も年間費用が高額なのはゴルフの16万円となっています。やはり紳士のスポーツはお金がかかりますね・・・
釣具業界の売れ行き状況
続いて釣具業界の状況について調べてみます。日本国内の大手釣り具メーカーであるシマノとダイワについて釣り具の売上高や経営見通しを調査しました。
シマノの売上高は増加傾向
シマノは自転車と釣具のシェアメーカーですが、今回は釣具に絞ってデータを見ていきます。

シマノが2025年2月に公表している決算短信説明資料によると、釣具売上高は2014年から現在まで概ね増加傾向にあります。日本国内での売上高は近年小幅な増減を繰り返していますが、それでも2014年よりも1.5倍ほど増えています。
そして注目したいのは海外の売上高です。海外売上は年々増加しており、2025年現在では2014年の2倍以上の売上を誇ります。シマノの戦略として、販路を海外にも増やすことでシェア拡大を狙っているようです。
シマノは自転車業界でも世界的に有名なメーカーですが、釣具においても世界に誇れるようなブランドになってほしいものですね。
ダイワも売上高は好調
ダイワブランドを運営しているグローブライド株式会社が2024年11月に公表している決算説明資料からデータを見ていきます。

シマノ同様、ダイワの売上高も年々増加傾向にあることがわかります。ただし、ここ2年くらいは上げ止まっている感があります。

ダイワも海外への販路を広げており、日本での売り上げも順調に増加傾向ではあるものの、海外ではそのスピードは凄まじいものがあります。
海外進出で売り上げを伸ばしていることはもちろん凄いですが、釣り人口が減り続けている日本でも着実に売り上げを伸ばしにきている体制も一定の評価に値します。
今後もこの傾向が続くかは微妙かも
上記のように釣具業界は年々売上も増加傾向にあり順調に見えます。しかし、この先もずっとこの傾向が続くかどうかは不透明です。
その要因としては、世界的なエネルギー価格の高騰や物価上昇が影響しています。日本国内ではレジャーや嗜好品の市況は思わしくなく、今後も消費減退が予想されます。また今後の為替変動による海外売上高の不透明性も懸念されます。
釣りを楽しむ環境としての要因
釣り人口が減っている理由は先に述べた総人口が減っていることもありますが、それ以外にも要因はあります。釣りができる環境が変わったことが考えられます。
釣り場が減った
最近では釣りが自由にできる場所も限られてしまい、釣り場難民になる釣り人も現れ、それに伴い釣りをやめてしまった人も一定数居ると思われます。
2000年代に改正されたソーラス条約の規定により、一定程度の規模の防波堤、漁港などの港湾地域の多くが立ち入り禁止という扱いになりました。
これはテロ対策等による措置ですが、これによってフェンスが張り巡らされ、今まで普通に釣りができていた場所で出来なくなってしまいました。

(川崎市の資料より)
このため、ソーラス対象ではないエリアに釣り人が集中する傾向になりました。そして地域住民とのトラブルや、タバコやゴミのポイ捨てなどの問題が常態化し、立ち入り禁止措置を取る漁港が相次ぎました。
魚が減った(海洋資源は減少傾向が顕著)
70代以上のベテラン釣り師の方とよく話をする機会があるのですが、そのときによく聞くのは「昔はもっと釣れたのに」などという話。
これはおそらく爺ちゃんたちの昔の思い出補正的なものが多少あろうかと思いますが、気になったので昔と今とで魚の数は違うのか調べてみました。
沿岸漁業の漁獲データは次の通り。(水産庁より)

驚くべきことに、1990年ころをピークに漁獲量はどんどん下がり、今では当時の半分以下。近年では中国を筆頭にアジア諸国での漁業量増産が著しく、海洋資源の枯渇が危惧されています。
魚の数が少なくなっているという事実を、データとして見るとやはり悲しいですね。釣りを始めたばかりの新規ユーザーでも、なかなか魚が釣れないんじゃ辞めちゃいますよね。
まとめ(末永く釣りを楽しむために)
以上の通り、釣り人口は年々減少傾向である一方、釣り業界の売上は好調であるという二面性を見ることができました。しかし、釣り業界の好調は今だけの可能性もあります。今後の推移に期待したいですね。
釣り人口の減少には、釣り場や魚の減少も影響していると思われます。
今後も末永く釣りを楽しめるためにも、釣り場ではゴミを持ち帰るのは当然として、釣り場を守る意識をもって、要らぬトラブルを起こさぬようマナーを守って楽しみましょう。
また、釣った魚についても必要以上にキープせず、小さいサイズはリリースしたり、抱卵している個体も積極的にリリースし資源保護に努めましょう!